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患者に寄り添い、支える医療

 
  
第36回(平成28年度)
全国高校生読書体験記コンクール県入選
伊藤 美紗希さん(新潟県立新潟高等学校)

高校に入学し、両親と今後の進路や将来の夢について話す機会も増えてきた私の将来の夢は医師になることである。少子高齢化が進む現在の日本では、医師不足という問題が指摘されている。しかし、本当に医師が不足していることだけが問題なのだろうか。現役医師である父と時々話をしていると、そう思うことがあった。そのため、医療についてもう少し学んでいきたいと思い「医療のこと、もっと知ってほしい」を選んだ。

新潟県立新潟高等学校



この本は四章構成で、第一、二章では長野県にある佐久総合病院で行われている高度な救急医療と地域ケアについて書かれており、第三章では各現場で働く医療関係者たちの仕事に対する思い、第四章では現在日本が取り入れている「国民皆保険」について書かれている。私は小学生の頃に、法人ホームを訪問した経験があり、その時に高齢者の方々と話をしたり、一緒にゲームをしたことがある。高齢者の方々との会話の中で、興味のある昔の歴史を教えてもらったことが心に残り、自宅療養をされている方々など、もっと多くの方と接することで色々なお話を聞きたいと思った。そのためにも、まずは相手のことを知る必要がある。その方法が第二章に書かれていたため、そこの部分を掘り下げていこうと思う。 

佐久総合病院では、在宅ケアを望む患者に寄り添う医療を実践している。佐久総合病院のなかで、最も地域とのつながりの濃い診療科は「地域ケア科」である。地域ケア科では実践内容として、医師による訪問診療や看護師が行く訪問看護、それに地域の事業所と連携しての介護士、ホームヘルパーによる訪問介護などを組み合わせた在宅ケアを行っている。また、患者の再入院も積極的に受け入れており、患者の人生の最終章を支える大きな柱となっている。しかし、単にこれらを黙々と実践するのではなく、患者とのコミュニケーションも大切にして治療にあたっていると感じた。コミュニケーションの取り方によっては患者の心境に大きく影響を及ぼすため、治療以上に力を入れているのだなと思った。佐久総合病院の黒髭ドクターこと北澤彰浩医長は、患者だけでなく患者の家族一人一人にも目を向けている。彼の考える在宅ケアの目的とは、その人らしく生きてもらうために寄り添って、生活を支えること、そして世界でたった一人の、その人らしく生きてもらうことだそうだ。ここまで深く患者のことを考えていることに驚いた。医師というのは、患者のことを第一に考え、患者に対して最善の対応をすることが求められるのではないかと思った。また、それを現在の社会で実践している数少ない医師が北澤先生だと思った。 

では、北澤先生は患者との距離を縮め、寄り添うためにどのようなことをしているのだろうか。その方法として重要となってくるのがやはり、コミュニケーションの取り方である。患者の自宅を訪問する時、患者の容態や家族の様子を見るだけではなく、患者の自宅に飾られているものや患者のベットが置かれている場所などもよく観察をする。そこから患者さんが病気になるまで、どのような生き方をしてきたのか、家族からどう思われているのかということなど、色々なことが分かるそうだ。そこから、患者との会話につなげていく。患者のことを知る方法は観察や会話の他にもある。北澤先生は、訪問先で手料理に箸をつけている。これは、決してお腹がすいているわけではなく、手料理を食べることによってその家の味付け、塩分の加減を知ることができ、食生活についてもアドバイスをすることができる。 

このように、あらゆるところに気を利かせることによって患者との関係を作っていく。今は亡き私の祖父は自宅療養ではないが、病院で入院生活を一年程送っていた。入院したばかりの頃は、まだ目が生き生きとしていたが、しだいにどこかをひたすら眺め続けているような状態となっていった。しかし、私が見舞いに行き話しかけると、目を大きく開いて一生懸命聞こうとしてくれた。帰り際に祖父と握手をすると、力強く握り返してきた。その時に、患者は誰かと挨拶を交したり会話をすることによって元気が出るのではないかと思った。北澤先生はそのことをよく知っているため、なおさら患者とのコミュニケーションを大切にしているのだろう。今はまだ知識のない私でも、患者に寄り添うことはできるのだと改めて感じた。 

私たちが住む新潟で、佐久総合病院に勝る地域ケアを行っている病院はないそうだ。そこで、私はこれから医療を学ぶため医学部を目指し、将来的に佐久総合病院のような患者に寄り添い、患者の生活を支えていける地域ケアを充実させていきたいと思う。


 

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