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「呪いをかけずに「どうせ」と言わずに」

 
第37回(平成29年度)
全国高校生読書体験記コンクール県入選
星山玲奈さん(第一学院高等学校 新潟キャンパス)


 「どうせ」は魔法の言葉。脱皮していく事を諦めさせる力を持つ。変化をせずに、否、変化できないと決めつけて、古い皮を纏い続けてしまえば楽だからだ。そうなるともう魔法ではなく、呪いの言葉だ。

 私はこの夏「心が叫びたがってるんだ。」という本と出会った。この本を見つけた時、「これだ!これこそが、私が読みたかった本だ!」と思った。シンパシーを感じたのだ。

 この物語の登場人物、成瀬順という少女は、幼い頃に発した言葉が原因で家族をバラバラにしてしまった。そして「玉子の妖精」にお喋りを封印され、お喋りをするとお腹が痛くなる呪いをかけられた。人と意思の疎通をはかるには携帯のメールや筆談となった順。だが高校二年のある日、順とクラスメイトの拓実、葉月、大樹の四人が「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命され、クラスの出し物でミュージカルをやる事になる。

 シンパシーを感じた。私はお喋りを封印された成瀬順に共感を覚えたのだ。

 私は話すことが苦手だ。苦手と言うより難しいと言った方が合うかもしれない。一言も発せない訳ではないが、声が喉に支えて出せないのだ。出せる事が出来ても、すらすらと話したり長い間話したりは難しい。それ故に、辛い思いもしてきた。私の場合、家族や付き合いの長い友人とは結構話せるのだが、一時期それ以外の人とは全くと言って良い程に話せなかったのだ。声が出なかった。無理に出してもすらすらと言えない為、一部のクラスメイトに馬鹿にされたり笑われたりした。だが、それ以上に辛いことがあった。それは「話したい」のに「話せない」という事だ。皆の様に話せないのがもどかしくて仕方がなかった。

 この本の物語の終盤、玉子に呪いをかかえられていた順がとてもとても大切な事に気付く。
「ああ、本当に玉子なんていなかったんだ。呪いをかけたのは-私。玉子は私。ひとりで玉子に閉じこもってた、私自身―。」
順は自分自身が呪いをかけていた事に気が付いたのだ。

 実はこの本を読む少し前から、一時期に比べて調子が良くなっていた。周りの人より声も小さいし、話し出すのも遅いし、長くは話せないが、自分なりに少しずつ変わっていってると思う。そして、そんな時にこの本を読んで強く思った事がある。
「『どうせ』と言って、自分に呪いをかけるな。」
とても便利な言葉だ。「どうせ」と言ってしまえば、今の自分から変化せずに古い皮を纏い続け、楽をする言い訳にできる。今思うと状態が酷かったあの時期に、私も自分に呪いをかけていたのかもしれない。
「どうせ自分は話せない。」
決して楽をしていた訳でも、自分を変えたいと思っていなかったわけでもないが、やっぱり心のどこかにそういう気持ちはあったと思う。気持ちの問題で全てが解決する訳ではないかもしれないが、どんな気持ちでいるかは自分の行動に大きく影響をもたらすはずだ。

 この夏、私は学校内で行われる大会の応援フラッグの原案担当を任された。そこで一つ、あるチャレンジをしてみた。
「自分から話しかける」
原案担当となれば必然的に、下描きや着色のシーンで意見を求められる。そこで、自分から話しかけてみようと思ったのだ。昔の自分だったら、きっと怖くてできないだろう。しかし、もう「どうせ」と言って自ら呪いをかけるのはやめようと決めた。
「文字をもう少し強調したい」
「ここは赤などを使いたい」
ほんの少しだったが、自分から話しかけて意見を言えた。まるで、脱皮をして新しい皮を纏えたような気分だった。

 きっとこの先の人生も困難が待ち受けているだろう。しかし、そんな時こそ前を向いて頑張っていこう。自分で自分に呪いをかけずに、「どうせ」と言って諦めずに。そうすれば私は、どんどん新しい自分へと脱皮できる気がするから。もっともっと自分を変えられる気がするから。
 

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