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今を生きるための道しるべ

 
第36回(平成28年度)
全国高校生読書体験記コンクール県入選
川瀬 結芽子さん(第一学院高等学校 新潟キャンパス)

中学三年生の夏、私は学校へ行かなくなった。不登校と同時にうつになり、自殺の方法や遺書の内容を考える毎日を送っていた。自殺願望だけが募り続けていたある日、私は一冊の本と出会った。『全力疾走』だ。阪神の西岡選手、本を出したんだなあ、なんて眺めているうちに、気がついたら買ってしまっていた。なぜなのか、今でもその理由はわからないけれど、もしかすると運命だったのかもしれない。

第一学院高等学校 新潟キャンパス



本を読んでいるあいだ、涙が止まらなかった。野球人生の壁にぶつかり、死にたいとまで考えていた頃の西岡選手が、不登校の自分と重なった。こぼれた涙は悲しい涙というより、嬉しい涙に近かった。生きていること自体がすごいことだと、初めて気付かされたから。私の気持ちをわかってくれる人がいた。私は一人じゃない、と感じることができた。もう少しだけ、生きてみようと思えた。まるで、前を向こうとしてもどこが前かわからず、一人暗闇に取り残されていた私に、西岡選手が手をさしのべてくれているようだった。

そして、この時から、私は過去を変えようと決意した。確かに、タイムリープでもしないかぎり、過去に起こった出来事をなかったことにはできない。しかし、事実は変えられなくても、「失敗」を「いい経験」と言えるようにすることはできる。私が不登校だったことも、うつになったことも、それが原因で行きたくもなかった通信制の高校に入学したことも、これらは私がどんなに認めたくなくても、紛れもない事実だから、受け入れるしかない。多くの人は、「不登校=失敗」だと思っているかもしれない。私だってそう思っているし、後悔している。けれど、これから先の人生で、「不登校を経験したからこそ成長できた」「通信制の高校に入ってよかった」と、思えれば、すべてが成功体験になるのではないだろうか。本当に大切なのは、自分がどう感じるかで、周りの評価じゃない。そういう意味で、私は過去を変えたい。

『全力疾走』に出会って以来、私はずっと信じている。辛かった過去も、辛い現在も、辛くなるであろう未来も、「今」を精一杯生きることで未来は変わる、と。なんとなく目に止まり、なんとなく手に取った一冊の本は私にとって、どん底からぬけ出すための道しるべだったのだ。絶望していた私に、生きることの意味や大切さを教えてくれた。

西岡選手は、自分のことを弱い人間だと言っているけれど、私はそうは思わない。自分の弱さと向き合いながら、試練を乗り越えて「今」を生きている。きっと、これから先の野球人生で大きな壁にぶつかったとしても、必ずまた乗り越えていくだろう。そして、その姿に、私はまた励まされるだろう。いつか私も、そんな西岡選手のように強くなりたい。


 

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