〔第60回解読文・解説〕
解読文
解説
今回のテキストは不思議な文書です。「生計を立てていくのが難しくなったので、江戸で武家奉公します。ついては村の宗門人別帳から(私を)はずして下さい。村に帰ってきたらまた人別帳に書き載せて下さい。」と書かれています。住田新村の木三郎はこのような内容で自ら帳外し(除籍)を願い出ています。そして帰村したら復籍してくれ、とも書いているのです。戸籍でもある人別帳から除外して欲しい、と本人が願い出るのも不思議ですが、あとあとの復籍についても願書の中に書かれている何ともおかしな文書です。この文書の中で述べられているような戸籍の移動や修正は簡単にできたのでしょうか。
文書を丁寧に見てみますと、除籍を願っている本人と連帯保証人が署名しています。保証人には庄屋も名を連ねています。実はこの文書は、ある一定期間の除籍(臨時帳外れ)を願うものです。江戸時代には期限付きの除籍、その後は復籍が認められるシステムがあったようです。ですから公の立場にもある庄屋が署名をしていますし、きちんとした体裁の文面からは周知されたシステムであったことが伺えます。
資料請求番号:E9321-1-194