〔第17回解読文・解説〕
仙見谷村の浅右衛門が出羽三山に登拝したときの道中記が今回のテキストです。
出羽三山(月山・羽黒山・湯殿山)に対する越佐人の信仰は古く、鎌倉時代末期に佐渡の遊行聖が羽黒山頂に埋納した経筒が発見されていますが、江戸時代以降も、中越・下越・佐渡地方が旦那場になっており、各地に講が結ばれ羽黒山系の法印や、湯殿山系の行人に引率されて多くの人々が三山に参拝しました。テキスト表題が「下参り(しもまいり)」となっていますが、出羽三山が越後の下手にあるものと見られていたことによります(「オシモ講」という言い方もあります)。
山田浅右衛門の辿った道筋は次の通りです。
仙見谷村(五泉市村松)―五泉町(五泉市)―新発田町(新発田市)―真野(聖籠町~新発田市紫雲寺)―乙(胎内市中条)―塩屋(村上市神林)―大川(村上市荒川)―岩船(村上市)―村上城下(村上市)―猿沢(村上市朝日)―塩野町(村上市朝日)―分道(葡萄峠、村上市朝日)―大そう(大沢、村上市山北)―中村(村上市山北)―中継(村上市山北)―小俣(村上市山北)―小名部(山形県温海町)―小国川(温海町)―木野俣(温海町)―温海川(温海町)―菅野代(温海町)―坂野下(鶴岡市)―鬼(坂)峠―町田川村(温海町)―湯田川村(温海町)―金峯山(鶴岡市)―十王峠(山形県朝日村)―岩本(朝日村)―注連寺(朝日村)―月山―弥陀原―大まん―羽黒山―鶴が岡七日町―三瀬(鶴岡市)―小波渡(鶴岡市)―五十川―暮坪(温海町)―温海川―鼠ヶ関(温海町)―向い関―大川村(村上市山北)―中村(村上市山北)―村上―平林(村上市神林)―大川(村上市荒川)―黒川(胎内市黒川)―加治(新発田市加治川)―新発田(新発田市)―五十公野(新発田市)
こうした道中記は個人の記録という側面ももちろんありますが、続いて旅に出る人にとってはよきガイドブックになります。このテキストも、落ち着いた筆跡から考えて、後の人のために清書(書写)されたものとも考えられます。
浅右衛門の道中記を手がかりにして、旅をするのも一興ではないでしょうか。
【参考文献】
日本地名大辞典:新潟県(角川書店)
日本地名大辞典:山形県(角川書店)
新潟県史(通史編):近世3(新潟県)
新潟県史(資料編):民俗文化財編1(新潟県)
山形県史:第3巻(山形県)
新潟県歴史の道調査報告書:浜通り・出羽街道(新潟県教育委員会)
資料請求番号:E9321-2-202-1