[第106話]新潟県の点字投票ことはじめ

 現在の選挙制度の投票は、有権者が自ら投票所で投票用紙に候補者の名前を記入して投票箱に投函することが原則です。例外として、身体が不自由で投票用紙に自ら書くことができない人の代理投票や、視覚障害の人の点字投票制度などがあります。

 さて、点字投票ですが、いわゆる男子普通選挙法が開始された大正14年(1925)の衆議院議員選挙ではじめて点字での投票が公認されました。このときは衆議院議員選挙に限り点字投票が認められたため、市町村会議員選挙では点字による投票を無効とする自治体が多く出ました。その後、大正15年6月に地方議会選挙でも点字投票が公認され、当時行われていたすべての選挙で点字による投票が認められます。実際に点字投票が行われたはじめての地方議会選挙は、同年9月3日の静岡県浜松市の市会議員選挙でのことでした。

 新潟県ではじめて点字投票が行われたのは、昭和2年(1927)の新潟県会議員選挙です。この昭和2年の選挙に向けて新潟県が準備した際の書類の一部が「県会議員選挙関係書類 投票函調製配置点字器調製」(請求記号:H92-総財-339)にまとめられています。それには、投票所に備え付けるための点字器を購入する注文案が記載された書類が綴られており「1、体裁は見本として送られてきた点字盤に倣(なら)い、新潟県の投票用紙型に適合するように調製すること。2、数量は1枚2円の点字盤を430枚注文すること。3、用紙止めの釘は上下2段に作り、点字を2行にわたって打つ場合を予想して調製すること。4、現品の発送日は3月末日とすること(止むを得ない場合は多少遅れても良い)。(注1)5、点字盤には新潟県の刻印を押捺(おうなつ)すること。」と5点の注文があったことがわかります。この注文案を元に点字器を発注し、昭和2年5月に点字を打つための鉄筆とともに納入されました。また、点字器購入に関係する書類だけでなく、大阪毎日新聞慈善団が点字投票の際に必要な点字読方一覧表を各市町村の数に合わせて新潟県に寄贈した書類や、地方議会選挙で点字投票が認められた大正15年時の点字器販売案内状も綴られています。

 点字投票は大正14年に認められて以来、現在まで続く制度です。点字投票だけではなく、投票日に所定の投票所で投票できない有権者が事前に投票することを認める不在者投票や期日前投票、自宅で投票できる郵便等投票なども認められています。今後も点字投票に限らず、より投票しやすい環境になることが望まれます。

 

(注1)…この注文案が記載された起案書の日付は昭和2年3月12日です。

(【県会議員選挙関係書類 投票函調製配置点字器調製】(請求記号:H92-総財-339))

「点字盤説明書」

(【県会議員選挙関係書類 投票函調製配置点字器調製】(請求記号:H92-総財-339))