〔第39回解読文・解説〕

解読文

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解説

羽下村伊藤家文書には、同村の長八が諸国巡拝の旅先で病により亡くなった時の様子を物語る文書がいくつか残されています。

今回取り上げたものは、そのうちの一つで、病気が一時回復した長八を国元へ送り届けるための帰国手形です。

近江国坂田郡藤川村の人々は、見知らぬ越後の旅人を医者に見せ、薬も飲ませてくれています。そして、次第に回復に向かった長八が帰国を望めば、村から村へと送ってもらえるように、このような文書を認めてくれました。

こうした行き倒れ人への対応は、幕府が命じた村送りの制度としてありました。この制度は、少し形式を変えてはいますが、市町村役場が送り継ぐ形をとって、明治・大正・昭和・平成へと受け継がれています。近年は、各市町村の社会福祉協議会に引き継がれて行われています。

江戸時代が旅行ブームの時代であったことはよく言われることですが、このような社会的な保証があったればこそのブームであったと言えるでしょう。