〔第29回解読文・解説〕

解読文

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解説

明治維新を直前にひかえ、世情騒然とした時代の願書です。政治的不安定に天候不順による凶作も重なり、慶応2年(1866)は、米価・諸物価がかつてなく暴騰した年でした。越後各地でも、徒党の横行、村役人層と小前層との対立(村方騒動)、さらには一揆が多く発生しました。

この願書に出てくる池端知行所の村々では、地主村役人衆が、小前の難渋に対して才覚金を渡しておりますが、こうしたことをしないと(あるいはできないと)、村方騒動や一揆に発展することがあったのでしょう。願書は、6月以降の生活の見通しが立たないことを訴え、2度目の拝借金を願い出ていますが、撥ね付ければ一揆を誘発しかねず、役所側の対応も難しいところがあったと思われます。

憶測をたくましくすれば、この願書は、そうした役所の足元を見極めた上でのものであって、そこに願主たちのしたたかさを読み取ることも可能かもしれません。

資料請求番号:E9916-191