閉じる

「地方には光がある」

 
第31回(平成23年度)
全国高校生読書体験記コンクール優良賞
高野紗江さん(新潟県立高田北城高等学校)

私は自分が住んでいるこの町が昔から嫌いだった。交通の便は悪く、電車やバスは一時間に一本くらいしかないし、遊ぶところもかなり限られている。小学校高学年、もしくは中学生くらいから大学は都会、出来れば首都圏に行きたいし、就職だって都会でして不自由のない生活を送りたいと思っていた。自分が住んでいるこんな田舎で就職して自分の一生を終えたくないとまでも思っていた。

新潟県立高田北城高等学校

新潟県立高田北城高等学校


また、自分の住む町が人を呼び込もうとする姿を今まで何度か見かけてきたが、見るたびにそんなに頑張っても所詮地方は地方、頑張ったってこの町では無理だ、都会には勝てない、と思ってしまいそのように頑張っている人の姿がとても恥ずかしかった。


そんな私をこの本が変えた。「県庁おもてなし課」は高知県が舞台の物語だ。観光立県を目指すべく「おもてなし課」を立ち上げ、地方活性のために苦しみ奮闘しながら成長していく姿を描いている。実際に高知県庁にはおもてなし課という観光復興部があり、この話のほとんどがノンフィクションだ。


物語の中で実際に村おこしに成功した高知県馬路村という村が登場する。この馬路村の成功のポイントの一つに、村のいたるところに力強い筆で描かれたイラストと筆文字が一貫して使われているということがある。そのため、案内板なども通り一遍の無味乾燥なものではなく、温かみのある個性的なものになっているのだ。しかしそういった事例は、自分の住んでいる地域とは遠く離れたところのことで、この地域には関係のないことだと思っていた。


この夏休みに友達に誘われて近くの温泉に行った。するとそこの案内板には手書きの温かな字で「休憩所」「おみやげ」などと書かれてあったのだ。そのことに私はとても驚いた。まさか馬路村のような光景がこんなに身近で見られるとは思ってもみなかった。実際にこういった光景を見てみると、活字ではない手書きの温かさが伝わってきて身体だけではなく心まで温まった。


更に私はそこで雪室というものを初めて知った。食堂では今年の夏は節電と言われているにも関わらず、とても涼しく快適であった。友達に聞くとそれはどうやら雪冷房といって冬に積った大量の雪を雪室で保存しておき、その冷たい空気を冷房として使っているのだという。しかも、雪室はお酒を貯蔵し熟成させたりお米を貯蔵したりすることにも使われているようだ。雪国に住んでいる私たちにとって冬の生活の邪魔でしかない雪が、夏はこの様に人々の生活のために使われていることを知り、驚きと共にこの町に新たな光が見えたような気がした。


この本を読んだ今はこのように頑張っている人の姿が恥ずかしいのではなく、誇らしかった。むしろこの土地に住んでいながら何も知らなかった自分自身が恥ずかしかった。もう自分の住む町について異常に悲観するなどということもなくなった。むしろ地元の人々がこんなに頑張っているということや、雪室のことなどを、それらを知らない人に知らせたくなった。このような知らないことを知ってほしい、楽しんでほしいという「おもてなしマインド」が観光立県へつながっていくのかもしれない。


自分が住んでいるこの町は決して都会ではなくむしろ田舎であり、都会に比べてないものがたくさんある。都会のような利便性は全くと言っていいほどない。けれども都会にこんな雪室などというものは存在するだろうか。都会にはない地方ならではの面白さがあるのだ。ショッピングセンターや観光施設を作るということだけが地方を発展させるやり方なのではない。無理やり都会のようになろうとするのではなく、その土地が持っている光や面白さを生かしていくことでその土地らしさを持った発展が出来るのだ。その光に気付けるかどうかはその土地の人次第だ。しかし、住み慣れた人たちにとってその光は当たり前で見落しがちだ。だからと言って初めから自分が住んでいるところはだめだと悲観していたらせっかくある光も消えてしまう。自分の地域をいかに愛すか、向き合えるかが重要になってくるのかもしれない。


この本をきっかけに自分の住んでいる町を見つめ直すことによって、大嫌いだったこの町の魅力に気がつくことが出来た。交通の便は悪いし無いものばかりのこの町よりも都会に住めばなに不自由のない生活を送れるかもしれない。しかし、地方の持つ面白さや温かさというものは都会には無いものだと思う。地方で少し不自由な暮らしをしながらその土地独特の面白さに触れながら生活し、この地元で就職して、地元の素晴らしさを伝えていくというのも悪くない。


地方には光がある。都会には無い面白さで溢れている。私はそのことを多くの人に知ってほしいと思った。

 

このエッセイに関連する本