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「マネージャーについて考える」

 
第33回(平成25年度)
全国高校生読書体験記コンクール県入選
佐竹海音さん(新潟県立新潟高等学校)

私は高校に入学し、サッカー部のマネージャーを始めた。中学生のときから部活動のマネージャーに興味があったからだ。図書館のスポーツコーナーで私はこの本を見つけた。自分自身が運動部の女子マネージャーということもあり、この本に興味を持った。これからのマネージャーとしての私に何かプラスになることがあるかもしれないということもあった。

新潟県立新潟高等学校

新潟県立新潟高等学校


この本は部活動の中で男性スポーツ集団に関わる女子マネージャーについて研究されている。まず書かれているのがマネージャーの誕生についてだ。戦前から戦後10~20年間は男子運動部は女子禁制であり、ほとんどのマネージャーは男子であった。そこに女子マネージャーが参入していった。その女子マネージャー誕生の要因を分析する。次に、女子マネージャーの存在を世間はどのように見たのか、メディア表象に注目している。メディアとして新聞と少女マンガを取り上げ、女子マネージャーのイメージの変容を追っていく。そして最後に書かれているのが女子マネージャーのアイデンティティについてだ。インタビュー調査をもとに、女子マネージャーのアイデンティティ構築プロセスを明らかにしている。この本では男子スポーツ集団をホモソーシャルな集団とし、それに深く関わりつつもその一員になりきれない「境界」を生きる存在が女子マネージャーとされ、その「境界」こそがアイデンティティの構築に欠かせないとされている。その結果、男性集団と女性のジェンダー関係はより強化されるとまとめられている。


この本を読み始めてまず気になったのが、昔の男子マネージャーと現在の女子マネージャーとでは役割や立場に大きな差異があったということだ。ジェンダー問題とセクシュアリティの問題が要因として取り上げられている。こんなところにも一種の性差別的思想があったのかと気づかされた。女子マネージャーが誕生した時代はまだ社会の中で女性の立場が弱かったのだと思う。また、スポーツの世界では、恋愛や性的欲望が選手を堕落させるという思想があったという。これらにより女子マネージャー反対の意見が多くあったというのだ。そんな中でも女子マネージャーが増加していったことの一因にメディアがあげられている。特に少女マンガは女子学生に大きな影響を与えたのではないだろうか。男性集団の中で大きな役割を果たす女子マネージャーに当時の少女たちは憧れを抱いただろう。そして男性スポーツ集団に女性たちが魅惑されていったのだと思う。男性スポーツ集団に魅惑されているというのは、私自身が非常に共感できる部分である。女性同士の関係性とは違った「男の友情」などといった言葉で表される「男同士の関係性」「男性集団に帰属する男性の男らしさ」というものに、私たち女子マネージャーは非常に魅惑されるのであって、私が女子マネージャーになろうと考えた理由の一つでもあるのだ。しかし、私たち女子マネージャーはその男性集団の一員になりきることはできない。私は、その中に入っていきたいと思いながら、元々男子の中に入っていくのが苦手なこともあって、どうすればよいのかわからなく、悩んでいた。ところが、この本の文中には、男性集団の一員になりたいと思いつつ、なりきれないことが、その男性集団をより魅力的にするのだと書かれている。この考え方には驚いた。私は男性集団の一員になることでよりよいマネージャーになれると考えていたのだが、女子マネージャーと男性集団の間の「境界」が大切なのだと文中に書かれている。越えられそうで越えられない「境界」だが、試合などの高揚感などで時にはダイナミックに越えてしまう。この自らのポジションの揺れ動きが女子マネージャーのアイデンティティを創り出す原動力だというのだ。どうしても生まれるその「境界」を私たちは越えようとする。簡単に越えられるものではないが、越えようとすることに女子マネージャーたちは楽しさを感じているのかもしれない。


私は今回初めてマネージャーの歴史に触れた。普段何を思うこともなくマネージャーとして部活動をしているが、マネージャーという存在、立場について改めて考えさせられた。今となっては広く認められている女子マネージャーだが、女性差別的に考えられることもあった。そして、女子マネージャーは男性集団の一員になりきることのできない存在である。この本を読んで、その「境界」を初めて認めることができた。今までのようにそれを否定的にとらえるのではなく、越える努力をしながらそこに私は自分の女子マネージャーとしてのアイデンティティを構築していきたいと考えている。

 

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