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「里山資本主義」

 
第34回(平成26年度)
全国高校生読書体験記コンクール県入選
村松健太郎さん(新潟県立新潟高等学校)

私がなぜこの本を選んだのか。私はこの夏、長岡市国際交流協会が協力しているILA(インターナショナル、リーダーシップ、アカデミー)に参加した。これがはじまりだった。そのILAに参加するための事前研修の一つとして、今は長岡市国際交流協会のセンター長を務める、羽賀友信氏の話を伺う機会があった。その中に、「FWへ行く前にぜひ読んでほしい。」と言われた本があった。これが、「里山資本主義」だった。

新潟県立新潟高等学校

新潟県立新潟高等学校


この本を通して、筆者が伝えたいことは、何も、お金をたくさん稼ぎ、世のためにお金を大量消費する必要はないということだ。しかし、勘違いしてはならないのが、江戸時代以前のように農村で、自給自足の暮らしに現代人を戻すべき、という主張ではないということだ。では一体何なのか。里山資本主義とは、「お金の循環が全てという、マネー資本主義にするのではなく、その経済システムの横に、こっそりと、お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方だ。では、具体的にどのような取組が行われているのだろうか。例えば、中国山地に位置する岡山県真庭市は、その面積の八割を森林が占めている。ここでは「木質バイオマス発電」という製材の過程ででる木くずを利用する発電を行っている。何にも利用しなければ、実に、年間四万トンもの木くずが廃棄されてしまうという。このように、普通ならただのゴミとして見なされてしまうものでも、実は利用価値があることもたくさんある。また、オーストラリアにおいても、身近に存在する木材を利用して人々は暮らしを立てているという。


私は、この本を読んで、「里山資本主義」の重要性に気づかされた。里山資本主義とは、先程も述べた通り、現代人の生活を昔の生活に引き戻そうとする極論ではない。


身近な所にも利用価値があるものは溢れており、それらを有効活用すれば、地球環境の保全にも貢献できるということだ。実際に、オーストラリアでは、再生可能エネルギーの使用率が70%を超えている地域もあるという。日本では、再生可能エネルギーの使用率が1%にも満たないことを聞けば、この数字がどれほど高いかよくわかる。では、一体どのようにして、このような数字を実現したのだろうか。その答えは、国全体として豊富な森林資源にある。すなわち、林業である。林業が国にもたらす恩恵の一つにペレットボイラーというものがある。ペレットボイラーとは、木を熱して出る炭化水素と酸素を混合させて燃焼させるものである。技術者たちが試行錯誤を重ねた結果、今やそれは、石油を上回るコストパフォーマンスを実現したという。また、これは、スイッチ一つで床暖房や給湯が行える。このような、オートメーションシステムは、山地の多い日本でも実用化すべきだと思う。


次に、私がこの本を読んで、変わった価値観について述べたいと思う。先日行われた、尾瀬研修で変わった価値観の一つに、自然を愛する気持ちがある。美しく、雄大な自然を人間は、平気で破壊していると思うと、自然に申し訳なかった。しかし、この本を読んで、森林の適度な伐採は、私たち人間のみならず、森林にも良い影響を与えることが分かった。そして私は思った。「森林を適度に伐採することは、明日につながる、今の人間に課せられた任務ではないかと。」その理由は、明日を見据えた「持続可能」という概念が、先に述べた、二つの価値観に共通するからである。


最後に、「里山資本主義」は、現代人が当然だと思っていたことに、ストップをかける考え方である。なぜ、羽賀センター長は、私たちにこの本を託したのか。私が思うに、海外に出て、様々な文化を持つ人たちの考え方を柔軟に思考するために、この本が役に立つからだろう。今まで、当然だと思ってきた日本人の考え方が通用しない。海外では非常によくあることだと思う。新たな考えに出会ったときに一歩引き、視野を広くすることで、寛容に受け入れられる。そんな考え方を学べるこの本は、私に小さな変革をもたらした。

 

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