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「何よりも大切なこと」

 
第35回(平成27年度)
全国高校生読書体験記コンクール県優秀賞
多田未夢羽さん(第一学院高等学校新潟キャンパス)

私が、この本を手にしたのは、中学校二年生の時である。


その時期の私は、学校には行っていなかった。いわゆる、「不登校」というやつだ。何をするにも勇気が出せず、誰とも会わなかった。そして、同年代の子達が、少しずつ自分のしたいことを見つけていく中、私は自分のやりたいことが何も見つけられずにいた。そして、そんな自分が大嫌いだった。

第一学院高等学校新潟キャンパス

第一学院高等学校新潟キャンパス


そんな時、この本「世界から猫が消えたなら」に出会った。たまには、本でも読むかと軽い気持ちで本を開いたが、ページをめくるたびに、この本の世界に引きこまれている私がいた。


この小説は、とある男の最後の一週間の不思議な話だ。


主人公は脳腫瘍により、余命が残りわずかだと医者に宣告される。その日、目の前に悪魔が現れ、明日死ぬ予定になっていると告げられるが、この世からひとつものを消せば、そのかわりに一日だけ命が延びるという取引きを特ちかけられ、それに同意してしまうのだ。


だが、主人公は、悪魔と出会って五日目でものを消すことを、やめた。ものを消し、明日の命を手に入れていくたびに、「本当に大切なもの」に気付いていった。主人公にとって大切なものは「家族からの愛」だった。


私は涙が止まらなかった。「家族からの愛」に気付いていないわけではなかった。母の鞄に、不登校についての本が何冊も入っているのも、私を元気付けようと父がいろんな所に連れて行ってくれたのも、友達が居なかった私に、姉がたくさん話しかけてくれていたのも。全て、私への愛だったのに、見てみぬふりをしていたのだ。


そして、その日から私は少しずつ少しずつ前進していった。時間はかかったが、学校に行けるようになった。片手で数えられるほどだが友達も出来た。だが、やっぱり自分のやりたいことを見つけられずにいた。


とある日、母が私に言った。「みゆうに会って、話してもらいたい子がいるの。」その子は、私より一つ下の女の子で、不登校。外に出ず家族ともあまりコミュニケーションを取ったりもしていなかったが、母が私の話をしたところ、「会ってみたい」と言ってくれたのだ。


私はものすごく不安だった。私の言葉で、もしかしたら彼女を傷つけてしまうかも知れない。彼女に私は何かしてあげることは出来るのだろうか。その時、私はとある言葉を思い出した。「ほとんどの大切なことは、失われた後に気づくものよ。」これは世界から猫が消えたならの、主人公の母親の言葉で、主人公が大切な事に気付くキッカケとなる。


私は、不登校になり、たくさんのものを失ってきた。それに気が付いたのは、学校に行けるようになってからだった。学力や友情、体育祭や、合唱コンクール。私はほとんど体験できなかったのだ。


そして、私は彼女に今までのことを話した。学校に行く勇気が無かったこと。それに、後悔していること。そして、どんな時も、家族が私を支えてくれていたと言うこと。そして、彼女と話しが終わると、彼女の母親が涙を流しながら、私に「ありがとう」と言った。やはり、彼女も家族に愛されているんだ、そう思った。


そして、今年の春に彼女が高校に進学し、毎日笑顔で学校に行っていると聞いた。「ありがとう」と何度も何度も言われた。そして私は心に決めた。「人の役に立つ」ことをしたいと。


私は、不登校になり、いろいろなものを失った。それと同時に、みんなが感じたことのない感情や体験をすることが出来た。それは、私の強みだ。私と同じで、学校に行けなかったり、自分に自信が無かったり、悩みを抱えている人はたくさんいる。その人達に、私の言葉や体験してきたことで、「勇気」「希望」を持って、前に進んでほしい。それが、私のしたいことで、私のやるべきことだと思う。


そして、昔の私に言いたい。「今の私は、誰よりも輝いているよ」と。

 

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