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[第93話]江戸時代のパスポート往来手形

 現代でも多くの人が国内・国外問わずに旅をします。また、日本を訪れる外国人観光客の数も2018年には3000万人を超しました。

 江戸時代にも、元禄時代頃から旅行ブームが巻き起こりました。理由としては戦国の世が終わりを告げたことや、五街道の整備が進んだこと、それに伴い各地で宿場町が形成されていったことなどが挙げられます。そのため、庶民も気軽に伊勢参りなどの旅行に出かけることが可能になりました。

 ところで、江戸時代の旅において、金銭などのほかに欠かせない必需品があったことをご存知でしょうか。写真のような往来手形と呼ばれる、現代で言えばパスポートの役割を果たす証文がなければ旅人は関所を通ることができませんでした。この往来手形ですが、発行はその村の庄屋か旦那寺が請け負っていました。旅人は自分の身元を証明するこの証文を持って全国各地を旅していたのです。また、往来手形には多くの場合、関所の役人や道中の村役人に宛てて「滞りなく通行できること」など、旅が安全に行われるよう配慮を求める文言が書き記されています。

 しかし、旅の道中で怪我や病気になる可能性はゼロではありません。目的地へ辿り着く前に、あるいは帰路で病に倒れたり、亡くなったりする人もいました。こうした場合、どのような方法が取られたのでしょうか。実は往来手形にその答えが書いてあります。掲載資料の後半には、もし旅の途中に死去するようなことがあれば故郷に知らせずともよい、葬式だけは宗派を問わず執り行ってほしい、と書かれています。幸い、この往来手形を持っていた甚兵衛さんは怪我もなく無事に帰郷することができました。では病気や怪我により動けなくなった場合はどうなるのでしょうか。幕府は往来手形を持った旅人が怪我や病気になった場合、医者の診察を受けさせ、快復するまで養生させたあと本人が望めば、出身地まで村送りしていくことを命じていました註1。知らない土地で怪我や病気になっても、往来手形があれば医者の診察を受け故郷に帰れるというシステムが江戸時代には既に出来上がっていたのです。

江戸時代の旅行ブームは、このような制度があったからこそ支えられていたのかもしれません。

 

註1…享保十八年「宿々病人倒死之者取計之儀触書」『御触書寛保集成』



 

往来一札之事  (請求記号:E1015-69