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「眩しい黄色」

 
第37回(平成29年度)
全国高校生読書体験記コンクール県入選
丸山季桜里さん(私立新潟清心女子高等学校)

 父と母が寝室として使っている部屋の隅に置いてある本棚。何気なくその本棚いっぱいに詰まっている本を見ていた時、一冊の本が目に入った。『カラフル』。その本の背表紙に書いてあるその題名に、私はワクワクしながらその本を手に取った。私はとても驚いた。その本表紙は黄色一色であったからだ。

 生前の罪により、主人公の魂は輪廻のサイクルから外されてしまった。しかし天使業界の抽選に当たり、主人公は人生の再挑戦のチャンスを得た。それは、自殺を図った少年、小林真の体にホームステイし、前世で犯した自分の罪を思い出さなければいけないというものだった。主人公は小林真について何も知らずに、医学的に死を宣告された小林真の体に入り込んで目を覚ます。真が生還したことにとても喜んでくれる両親と、すこし距離をおいて見守ってくれる兄の存在をみて、主人公は小林家のことを、優しくあたたかい家庭だと思っていた。しかし、父は自分さえよければいいとう身勝手な男で、母は先日までフラメンコの講師と不倫をしており、兄は真の顔を見れば嫌味ばかりを言う性格のねじ曲がった男だったのだ。小林真の苦痛はそれだけではなかった。通っている中学校ではクラスメイトに無視をされ、孤独な学校生活を送っていた。しかし、主人公は、本来冴えない地味な生徒だった小林真の身体で、髪形をイメチェンしたり、クラスでもひょうひょうと振る舞ったり、その急激に変化した、真に驚くクラスメイト達を気にしないで、かなり自由な行動をする。家族に対しても、言いたいことを自由に言う。私はこの主人公の態度に、生きていくうえでのコツみたいなものを教えてもらった気がする。

 物語の最後に、主人公は前世の記憶を取り戻す。自分は前世では小林真であったことを思い出すのだ。自分が前世でのいろいろな苦痛に耐えることができず、自殺をしてしまったことまでも鮮明に思い出してしまう。つまり、地味でいじめられっ子だった小林真と。ひょうひょうと自由な行動をとっていた主人公は、実は同じ魂を持っていたということなのだ。それは、前世の小林真もあの魂で生きていたということである。なのに主人公は、前世の小林真とは違い、自分の好きなように自由にやりたいことをやり、前世の小林真が出来なかったこと、例えば、好きな女の子と交流することや家族と和解すること、学校で親友をつくることなど、充実した数か月を送ることができていた。本当はまったくの同一人物だったのにだ。「他人事だったから。」という考えがあったからだと思う。

 私は自分は臆病な人間だと思っている。友達に嫌われることを恐れて言いたいことを言うことができず、少しの失敗に対してすごく落ち込んだり、まるで生前の小林真のようだ。だから、この本を読んで、元々臆病だった小林真本人が生き生きと人生を過ごす様子を見て、とても嬉しい気持ちになったのだ。そして、主人公を何度も助けてきたホームステイのガイドの天使のプラプラの言葉も、私を何度も励ましてくれた。たとえば「せいぜい数十年の人生です」「少し長めのホームステイだと思えばいいのです」といった言葉は、これからの自分の人生の中で、辛い出来事や悲しい出来事、それこそ死んでしまいたいと思う出来事に直面した時、それでも、まぁあと数十年の人生なのだから頑張ろう、と私を励まし続けてくれるに違いない。

 主人公である小林真が生前に見ていた世界は、きっとモノクロだったのだろう。でも、世界の色は自分の心の持ち方次第で簡単にカラフルに変えることができるのだ。私はこれからも些細なことで壁にぶつかるだろう。そのたびに、悩み、落ち込んで、死にたくなることもあるかもしれない。そんな時、私はまた、この眩しい黄色の表紙に手を伸ばすのだ。自分の世界をまた、カラフルな色でいっぱいにするために。
 

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